2020年12月から2021年の1月末まで、小田急線の窓上に掲載された広告を手がけました。だいぶ長く続いている和光大学の3分大学というシリーズの1回だったのですが、この回を担当する小野奈々先生に取材し、その内容をもとに電車に乗っているときに、ふと読みたくなるコピーに組み立てるという仕事でした。とはいえ、大学が出稿する広告ですから、うかつなことは書けません。先生の専門である環境社会学や社会運動論、ボランティア論について、付け焼刃ではありながら、勉強させていただきました。日本の環境社会学は、農村社会学の一派から派生しているため、公害による被害を扱うことからはじまったことや、小さなコミュニティの大切さを重視する立場にあるため、自然保護に重点が置かれていた欧米の環境社会学とは異なる、というのは意外な指摘でした。
また東京大学の仁平准教授の著書『「ボランティア」の誕生と終焉〈贈与のパラドックス〉の知識社会学』では、日本のボランティアが明治以降の時代の移り変わりのなかで、どのような文脈に位置づけられてきたかをまとめられていて、大変興味深いということを小野先生から教えていただきました。
明治期の慈善(売名、自己満足)から、大正に入ると社会奉仕へ。第二次大戦中は奉公、戦後60年代は政治と運動と切り離せないものとして、そして70年代以降は生きがいや自己実現になり、90年代は楽しいからやる、2000年以降はNPOなど市場経済へ接近するといったように「望ましい」とされるボランティアのあり方は時代とともに次々に変わってきたということが書かれているようです(まだ読んでない)。
仁平准教授自身がインタビューに答えて、出版したのは2011年2月だったので、3.11以前の本、だと言っているので、東日本大震災以降はまた変わっているのかもしれません。
そんないろいろお聞きしたお話の中で、小野先生の関心が「善意」のもたらすものは何か、「善意」は世の中にどう位置付けられるかにあるという話題もあり、それをピックアップすることで、上記のような完成原稿になりました。
詳しくは本文を読んでいただくとして、自分も「善意」という名のセンサーを敏感にしようと感じた取材でした。
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